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黒く禍々しい化け物が身体中にある幾つもの口を開く、咆哮を上げる。
「ほら、逃げるぞ。ロキ君の七つ道具[鷹の羽衣]」
そう言って、ロキは黒色のジャケットを裏返して着る。
すると、ジャケットは黒から白に変わり、白いジャケットを羽織る状態になった。
そして、少年の片手を掴むとロキの背中から大きな鳥の翼が生えて上空へと飛び立つ。
「ねえ、まだ追いかけて来てるよ」
上へ逃げたのはいいが、地上から化け物は諦める事なくロキ達を追いかけて来ていた。
漆黒だけの何もない世界なので化け物を阻む物も何も無い。
「チッ、しつこいなぁ……ロキ君の七つ道具[他力本願シーバー]」
再び指を鳴らし、次はトランシーバーのような小型機を出現させる。
「あー、メーデーメーデー。こちらロキ、助けてちょうだい」
ロキの喋り方にそれが助けてもらう側の態度か、とロキの片手からぶら下がっている少年は思った。
『…………今、行くよ』
トランシーバー越しに聞こえる声を聞き、ロキはニヤリと笑う。
すると、少年はあるモノに気付いた。
「あっ、あそこにいる子。危ないっ!!」
そう叫びながら、少年は指を指す。
その先には、明後日の方向を向いてぼーっとしている灰色の髪の少年がいた。
化け物もそれに気付き、一直線に向かって行く。
「ねぇ、助けないの?」
焦りながら少年はロキに問い掛ける。
しかし、ロキはニヤニヤ笑いながら化け物を見つめている。
「まあ、見てなって」
ロキがそう言った直後、化け物の悲鳴が響く。
気付くと化け物は宙を舞い、灰色の髪の少年は明後日の方向を向いたまま握り拳を作った右手を掲げ上げていた。
「ナイス、ヘズ」
少年が唖然としているのを尻目にロキは言った。
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