盗賊Roman

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頼む、もう止めてくれ。   そう涙目になりながら縋ってくるローランサンが面白くて、俺は珍しい哀願を無視して続きを読み上げる。   「ええっと、『そこで少年は背後に気配を感じ、恐る恐る後ろを振り返った...するとそこには、』」 「だあああああ!聞こえない!俺は何も聞こえない!!!」 「『なんと大きく口が裂けた女がすぐ後ろに立っていて笑いながらその手を伸ばして――』」 「ちょ、待ったあああもう駄目!俺もう無理だから!!女の顔まともに見れなくなるからやめてくれええええ!」   ホントに面白い。ていうか、楽しい。 俺はついにベッドの上でシーツを被って丸くなってしまったローランサンを見て笑った。   「なんだ、そんなに怪談話ダメだったのか」   前に滞在していた町で偶然見かけたこの本は、まあ俗に言う「オバケ」とか「幽霊」とかの話が詰まったホラー図書だったのだ。 今まで買ったことを忘れていたのだけれどサンが「なあイヴェール、お前幽霊系の話って信じるか?」とか言い出したのをきっかけに思い出した。 なんだ、こいつはそういうのが好きだったのか、なら字が読めないお前のために読んでやろう。と俺は優しく朗読してやったのだが、
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