ほもい

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じりじりと焼けるようなその熱は、喉を伝って胃へと流れ落ちていく。 その熱はやがて全身を駆け巡るようにぐるぐると渦巻き始め、次第には思考力さえも熱に浮かそうとする。 まるで麻薬のようだと、ぼんやりとし始めた頭で思った。 全身に浴びさせられたワインはじわじわとシャツに染み込んでいく。 赤い赤い。 血のような液体。 それを舐め上げながら、ローランサンはにやりと意地悪く笑った。 「どうした、そんな顔して。もう酔ったのかよ」 「・・・別に。ただ、匂いがきついだけだ」 「ふうん」 楽しそうに、満足げに、ローランサンは笑いながら俺の服にぶっ掛けられたワインを舐め取っていく。 嗚呼、こんな馬鹿げた遊びを始めようとしたのはどっちからだったか。 霞む脳でまだ新しいはずの記憶を引き出そうとしても、 何だか記憶自体がバラバラのピースのように曖昧で、思い出せなかった。 「っ、」 ぴりっとした痛みが首筋に走る。 見ればローランサンが犬のように尖った犬歯を俺の首に食い込ませていた。 じわりと広がった赤はやがてワインと混じり、赤黒く変色する。 それさえも躊躇わず舌で掬うローランサンはもうすでに酔っているのかもしれない。 ちゅ、と音をたてて額にキスをされる。俺は女じゃないと何度も言ってるのに、 こいつは懲りずに女に触れるような仕種で、俺に触れる。 止めろと言おうとして視線を上げると、丁度ローランサンと目が合った。 目元が微かに赤い。ほらやっぱり、お前も酔ってるじゃないか。 「なあ、イヴェール」 「・・・なんだ」 「キスしていいか?」 「・・・」 ぐらぐらと視界が揺れる。鼻に衝くのはアルコールの匂い。 「勝手にしろ」 酔っているのはどちらも同じ。 目を閉じる前に見たのは、勝ち誇ったように笑うローランサンの顔だった。 (どうせ明日になったら全て忘れているくせに)
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