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―――…
激しい雨が地面を打ち付け、紅光が辺りを照らし、虚空に浮かぶ月明かりさえ掻き消して……
"壊滅"、この二文字が的確だろうか、ボロボロになった家々、辺りに転がる生き絶えた人々、そんな凄惨な光景が広がる村の中から、僅かに響き聞こえる少年の声……
「……リオン兄、僕は…」
血まみれで倒れている、黒髪と深紅の瞳を持つ少年。
その瞳に宿る光は、今にも消えかけようとしていた。…
「…しっかりしろ、ルシアっ!くっ…」
ルシアと呼ばれる少年と同じ顔立ち、だが髪と瞳の色が違い、銀髪と蒼い瞳のリオンと呼ばれた幼い少年は、目に涙を浮かべながら、何かを決意した様な表情を浮かべた。
「…お前が助かるのなら、俺は……」
その言葉にルシアは反応した。
「ま…さか、リ…オン兄…!?」
ルシアの言葉を聞き、リオンは僅かに微笑む。
だが、その表情には決意の意思が見てとれた。
「大丈夫だ…、お前まで死なせてたまるか…。」
そしてリオンは右手を上にあげ、呪文を唱え始めた。
ルシアは紡がれていく詠唱を止めようとするが、傷が酷く、体をピクリとも動かせなかった。
その間にも、リオンは、その呪文を詠み終えようとしていた…
「…その代償を持って、彼の者を転生させよ――」
次の瞬間、辺りは眩い光に満たされていた――
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