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――…
「…くっ!!?」
早朝特有の朝靄がかかった森の中。
洞穴……と言うよりも、岩肌に空いた少し深めの横穴だ。そこで寝ていた少年がいきなり飛び起きた。
「ハァッ、ハァ…、夢か…」
肩に掛かるほど、少し長く伸びた銀色の髪と、透き通った左目の蒼い瞳。
――眼帯と長めに伸ばされた右側の前髪で右目を隠している"リオン=クロノス"は呟いた。
「…またあの夢、決して拭えぬ過去か…
…痛っ、右眼が…」
チクリと痛む右目を眼帯越しに抑え、小さく呟いた…
――何回、何十回だろうな。同じ夢を見ても全く慣れない…、慣れたくもないがな。
「…さて、今日中にはこね森を抜けないとな。そろそろ食料が欲しいし…」
近くに流れる小川で、些か眠さの残る頭を、しっかりと覚醒させる為に、顔を洗う。
その後に、僅かに残っていた、一口サイズの携帯食料を口に含み、ゆっくりとした足取りで歩き始めた。
――……だが、
「…道に、迷った…」
――仕方ないよな、俺は方向感覚がよくないんだ…
溜め息を溢し、誰に言い訳するでもなく、自分自身に言い聞かせて気を取り直していた。
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