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「はぁ…、道がわからん…」
深緑が辺りを覆う深い森。
別段、誰に向ける訳でも無いのだが、積る憂さを晴らす為に溜め息混じりに呟く。
どうしても重くなる足取りで、とぼとぼと適当に森の中をさ迷い歩く。
……その様子を眺める影が、息を潜めて森の奥にうごめいている事など未だ知らずに……
「……魔物の気配がするな、それもかなりの数……。」
『―グォオオオオ!』
不穏な気配を感じ、足を止めて後ろを振り返る。それと同時に、辺りの樹の影から、山程の魔物達が飛び出してきた。
飛び出してきた魔物の群れは、あっという間に俺を包囲する。
コイツらは……本で見たことが有るな、確か"クロードウルフ"だったか。森や山が主な生息地、巣を造って群れで行動し、獲物を狩る低級種の魔物。個々の戦闘力は大したことはないが、群れると厄介な魔物とされる……そんなヤツだった気がする。
「成る程、"逃げ場は無い"という訳だな……。はぁ…、人が疲れてるというのに……――消えろ、【フレイム・エッジ】」
――詠唱を省略し、発動に必要な言葉と術名を唱える。威力は下がるが、この程度の魔物相手なら十分な筈だ…
言い終わると同時に、前方にいた魔物の下から刃の様な炎が立ち上がり、数匹の魔物が一瞬でバラバラになり、燃え尽きた。
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