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「ありがとうございます! この町の宿屋の中でもウチを選んでくれて、本当にありがとうございます。こちらへどうぞ」  少女の先導について行き、大通りを少し進むと目当ての宿があった。そこそこ大きさがある二階建ての家屋だった。宿の入口まで辿り着くと、少女は一度振り向いて言う。 「いらっしゃいませ、“森の木陰亭”にようこそ!」  扉をくぐると、宿の一階は酒場になっているらしく、飲み客や宿泊客でいっぱいになっていた。そんな中を少女はこちらです、と言って客の合間を器用に進んでカウンターに近寄っていく。  旅人はそんな少女の後ろを所々他の客につっかえつつ後を追った。 「店長、お泊まり様です」  カウンターまでたどり着くと、少女は飲み客に酒を出していた、やや肥満気味の体つきの五十がらみの親父に声をかけた。親父は飲み客にちょっと待っててくれと言うと、エプロンで手を拭きながら愛想良く切り出した。 「“森の木陰亭”にようこそ。どこの部屋もキレイに片付いておりますよ」 「一部屋頼みたい」  男は手短に告げると立てかけられた料金表を調べて、金貨一枚を掴み出してカウンターに置いた。
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