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「ギリギリ間に合ったな…ふぅ」
いつになく本気で走ってしまった。おかげでギリギリかと思ったが、五分ほど余裕があった。クラスに入るのには少し躊躇した。だってそうだろ?周りには普通に見えても俺には男としての自覚があるわけで、いやはや女の制服とはなんとも気恥ずかしい。まぁ悲しいかな俺が入っても案の定周りの反応は普通だったが…あまり話したこともない女子に明るく挨拶されてビクッとなったのは余談だ。
『ガラガラッ』
教室のドアが勢い良く開いた。そして入って来たのは、ハルヒ。俺にとって今日起きたアクシデントの諸悪の根源だ。それにしても今日はえらく遅かったな、いつもならとっくに着席してふんぞりかえっているんだが。
「どうした?遅かったな」
俺は躊躇なく声をかけた、さっきの谷口との会話で口調とキャラはそのままで問題が無いことを知ったからだ。いつも通り聞き流したような適当な返事が帰って来ると思ったんだが…今日のハルヒは少し違った。
「あぁ、おはよう。なんだか昨日寝付けなくてね、寝坊しちゃったわよ」
ハルヒはニコニコしながら心底楽しそうに言った。そんな風に素直なハルヒはなんとも悔しいが、可愛い。そんな感じにハルヒの顔を見て呆けていたら。パチンッ!…デコピンされた。
「痛っ!なにすんだよ?」
「アンタこそどうしたのよ、私の顔なんか見てボケーッとして、なんか付いてた?」
そう言ってハルヒはクスクス笑っている。クスクス?ハルヒがクスクス?そのハルヒの笑顔はいつもの赤道直下の満面の笑みではなく、普通の女子高生、それも清楚さまで感じさせてしまうような笑顔だった。
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