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王妃様とのお別れ会の途中、王様と王子が王妃様の手を握り最後の祈りを捧げていると、大きな透明の水瓶を持った男がヅカヅカと入ってきました。
『金魚を見つけた!王妃様に一刻も早くお見せしたい!』
王様は寂しそうに男の前におもむき、首を横に振ります。
『…王妃は今…』
首を伸ばし、ベッドの上を覗くと全てを察したのか男は力が抜けたように座り込んでしまいました。
『間に合わなかった…。』
男は頭を何度も振り回し、諦めきれないように王様の目を真っ直ぐに見つめます。
『…王様…お願いがあります…ベッドの横のテーブルに水瓶を置いてもよろしいでしょうか?本当に綺麗なの分けてもらったんです。宝石みたいに輝く赤い金魚…もしかしたら王妃様もまだお近くに居るかもしれませんし…』
王様は少し考え力弱く答えます。
『…あぁ…見せておくれ…彼女が最後に欲しがったプレゼントだ…』
男が静かに置いた水瓶の中には、確かに見たことも無いほどに光輝く小さな魚が泳いでいました。その愛くるしい姿に誰もが心を奪われてしまいます。
それはまさしく赤い宝石のようでした。宝石が優雅に泳いでいるのです。
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