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王子が十歳を越え、ほんの少したった頃、王妃様は王様にこうお願いをしました。
『赤い金魚が欲しいの。』
王様はいきなり言われた王妃からの願いに戸惑いが隠せませんでした。
金魚なんて生まれてから今日まで見たことも無かったのです。
猫がいっぱいいるこの国で金魚を飼うとどうなるかは目に見えて明らかなので誰も飼った事がありませんでした。もちろん王妃様も例外ではないはずです。
『赤い金魚が欲しいの。宝石みたいに綺麗な赤が良いわ。』
実は、王妃様は数日前から起きていられない状態が続き、王様はここ最近、一時も離れずにベッドの回りをウロウロしていました。
どんな言葉も願いも聞き逃すものかと気を張っていたのです。
ですが、王様は自分の耳を疑いました。まさか金魚なんて…それくらい不思議なお願いだったのです。
『赤い…赤い金魚を飼えば良いのか?…』
『そう。赤い金魚。最後に一目見てみたいの。とても綺麗だと聞いた事があるのよ…ねぇ…お願い。』
『いや…あぁ分かったよ。必ず手に入れよう。そうだ!金魚用の部屋も作ろう。そこに君のベッドも入れるんだ!それなら安心だろ?』
『素敵…』
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