王妃の願い

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 王様は早速、金魚を飼ってきてくれる使者を募集しました。 何しろ何処にいるのか幾らするのか、どうすれば手に入るのか全く分からないのです。 そして国中の大工を呼び出し、どうすれば金魚を安全に飼えるのか会議を始めました。 王妃様が求めた最初で最後のお願いなのです。王様は必死に国中に王妃様の願いを伝えました。  みながお優しい王妃様の為に頭を、体を動かします。国民がここまで一致団結して何かを行なったのは初めてかもしれません。…ただ一人を除いて…。 王子は苦しそうな母を遠くから見つめていました。 いきなり金魚が飼いたいなんて的ハズレも良いところです。今にも消えてしまいそうな息がここまで聞こえてきそうでした。 王子には母の考えが分かりません。そして必死になって金魚を求める父の考えも分かりませんでした。何もかもに置いていかれる気分です。 『王子様、王妃様がお呼びです。』  一人ですねていると、後ろから不意に話しかけられました。王子は急いで平気な振りをし、脇目もふらず母のベッドの横へと走り出します。すぐ隣にはアロマも一緒です。 ベッドに着くと王妃様は王子の手を握り、小さな声で力強く話しかけてきました。
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