急襲†出会い†

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しかし、彼らが思う以上にティガレックスは危険な相手だった。傷ついた轟竜は自らの左目を潰して凄まじい勢いで砂漠を駆け回り始めた。闇雲に走っているようにも見えるが匂いで敵を探しながら走っているのだ。そして、あっと言う間にルッチとオリビアを探し二人をその剛腕の一撃でなぎ倒した。 「クソッ!野郎なんてえ馬鹿力だ」 ヘルメスも二人に続き、その身で怒れる轟竜の攻撃の破壊力を感じながら体勢を崩してしまった。 「これまでか……」 列車が砂漠を抜けた証としてのろしが上がったが彼は死を覚悟した、崩れた体勢で次の一撃は受けられない。そう判断した。 「………ッ」 だが彼は立っていた。轟竜の一撃を小さな体と盾でオリビアが受け止めたからだ。地面に叩きつけられてしばらく勢いが死なず彼女は転がり続けている。 「アンタが死んでどうするんだ?のろしが上がったんだから睡眠弾を撃てよ。それとも仲間を見殺しにする気か?」 ヘルメスに向かって振り降ろされた拳からは血が滴り落ちている。ルッチが人間離れした速さで拳を切ったおかげで轟竜はたじろいでいた。 「……ありがとう」 この瞬間彼は生まれて初めて心の底から他人に礼を言ったと思う。
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