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私はいつもベッドの上から四季を感じるしかない。
春になれば暖かい日差しが病室の大きな窓から入ってくる。
病室から見える一本の桜の木を見ては、またここで春を迎えたのだと深いため息をつく。
夏になれば蝉の声に耳を傾けながら青々と茂った桜の木を見て、いつになったら家に帰れるのだろうと考えてみる。
秋になればヒラリヒラリと散りゆく桜の葉をみて、なぜか切なくなり涙を流す日々もあった。
冬になれば寒そうな…寂しそうな桜の木を見て、長い間ここにいるのだと気づかされる。
友達なんていなかった。
だけどそれでも学校に行きたい。
みんなと遊びたい。
みんなと同じ事がしたい。
叶うはずのない私の願い。
分かってるのに…
長い間、この場所に居すぎたせいだろうか…
心まで弱っていく気がしてならない。
だから久々の退院が決まった時は夢でも見てるのではないかっと思うほど嬉しかった。
だけど気付いたんだ。
「花穂ちゃん。
退院が決まったのよ」
っと喜ぶ母親の目が赤く腫れていた事を…
きっと私は長く生きれない。
だから退院させてもらえたのだろう…
もう誰も私の中に住みついた悪魔を取り去ってはくれない。
悪魔は次第に私を闇へと引きづりこんでいく。
これが運命ってやつなのだろうか…
神様は酷すぎるよ。
いや…神様のおかげで何とか生きているのかもしれない。
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