第二条 同名の交錯

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◇◇◇私 私、『星野 鈴(ほしの りん)』は、たまにとんでもない不幸に襲われる。 つい昨日もそうだった。 具体的いうと、私の黒髪がバッサリ切られた。 香という友人が私にはいる。 香の長い髪に憧れて私も伸ばしてみようかな、と思ったのは2ヶ月前だ。 そこそこ伸びてきた矢先の出来事であった。 切った人物は、プロの散髪屋。 私が眠りこけている隙に、肩の辺りで切り落としたのだ。 そして、衝撃の一言。 「どうだい坊主、結構いかす髪型だろう?」 坊主? つまり私を男だと間違えた? 確かに男が女か分からない顔をしてるけど、酷すぎではないか。 その時は、ジーパンにシャツと両方とも男物を着けていたけど。 「ええ? 女の子? す、すみません。てっきり、でも、ほら。今ショートヘアーが流行ってますし、結構お似合いですよ」 笑顔を奇妙に痙攣させ、そんなことを言っていたのを覚えている。 きっちり代金は払わなかったが、腹の虫は収まらない。 「誰が、坊主だコンチクショウ! 私はれっきとした乙女だあぁぁ!」 夜のうちに正拳突きを百本打ち込んでも収まらない。 父親に「壁に穴あけるつもりか怪力娘!」と怒鳴られた。 実際あけてしまったので、そのまま親父と二時間に及ぶ決闘に移行した。 そして、昨日の事もあり精神的にグロッキーな私はフラフラ商店街を歩いていた。疲れのせいか、道行く人が私を見ているように感じる。 自意識過剰か? それとも、この髪型のせいだろうか。 そんなに、変なのかと少し落ち込んでしまう。 「おい、あいつ輪じゃないか?」 「マジかよ、輪だぜ」 すれ違いざまに話し声がチラリと聞こえた。 確かに私の名前は『鈴』だが、何で私の名前を知っているのだろうか。 この町に来たのは昨日が初めてだというのに。 疑問に思った矢先だった。 「おう、現行犯だぜ輪」
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