第二条 同名の交錯

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微かに手が動き、縋るように私にのばされる。 ここまでしても意識があるばかりか、まだ動くのか。 これ以上関わる事に恐怖を感じ、私は店から飛び出した。 ただもうがむしゃらに人の間を駆け抜ける。 道行く人々が、何事かと視線を送ってくるが構わず走りつづけた。 息が上がり、足が自然と止まる。 そして、はっと思い出す。 そうだ。友達の香と待ち合わせをしていたんだ。 しかも、今日は空手の練習試合。 全てにおいて遅刻だ。 「もう、何なのよアイツは~」 私はただ愕然とし、見知らぬ茶髪の青年に恨み言を呟いた。 ◇◇◇◇僕 「ヤッホー、鈴ちゃん。珍しく時間通りに来たじゃない」 後ろから声をかけてきた少女はそう言った。 誰だろう。親しげに話しかける彼女に、まったく覚えがない。 赤み架かった長髪は、腰に届かんばかりのストレート。 柔らかな笑みがよく似合う、可愛らしい顔立ち。 彼女を一言で表現するなら『凄い美人』。 「おーい、もしもし。鈴ちゃん、どうしたの? 風邪かな?」 気がつくと、その少女の顔がすぐ近くにあった。 「わっ、なっ」 慌てて飛び退く。心拍数が馬鹿みたいに跳ね上がっている。 「何やってるの?」 小首を傾げる少女は、不思議そうに僕を見つめている。
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