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嘘つきは始まり

「僕はね、嘘を吐いたら鼻が伸びるんだ」

木の人形が、一人喋った。
落ちかけたニスが木の人形を薄らと輝かせている。

赤い帽子に青いズボン。サスペンダーは薄く黄ばんだシャツを頼りなくとめている。
彼の足元に木屑が散っているのは、ここが工房だからだ。

暗い室内で一つだけ点いた電球が、まるでスポットライトのように人形を照らしていた。

もう一度人形が声を発する。

「僕はね、嘘を吐いたら鼻が伸びるんだ」

「本当に？」

もう一つの電球がゆっくりと光を灯す。
金髪で細身の人形が、スポットライトの下に立っていた。

ウェーブのかかった金髪は、天使の輪を描くように光を反射している。
桃色のドレスと白いレースは質素だが、木の人形と比べると清潔で美しかった。