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腰に佩いた一振りの剣。無駄な装飾を全て省いたそれは鞘に収まっても尚、切れ味を主張している。まるで胎動のよう。
「どうした」
短く問うと、その剣は声なき声で答えた。
『まただ。十歩程後ろ、三人。…剣があるが、弱い』
「なら、すぐ片付くな。お前の力を借りるまでもない」
『わかった』
剣が静まる。今度は剣に頼らず自分で気配を読んだ。確かに三人、がたいの良い男ばかりで、少しずつ歩調を早めている。当然彼との距離も縮まり、彼はその幅を正確に感じとっていた。
赤煉瓦の家が立ち並ぶ道を、右に曲がる。細道に消えた彼を三人の男が追うのは必然。
彼は振り返りざまに剣を、鞘ごと剣帯から引き抜いた。
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