過去になったあの日

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「ここに来た理由に、壊れたを第一に持ち出すのはどうかと思うけど?」  俺がそう言った時に、柚は風に当たって涼んでいた。  完璧なスルーをしてくれた。  俺が壊れたって決めつけてるね。 「柚~」  俺が柚の名前を呼んでも風にかき消されたかのようにまったくの無視。  俺はいじけた。 「すまない。耳障りだったから」  柚はそう言って微笑んだ。  ――――見取れていた。  艶のある黒髪のポニーテールが撫でられが如く風に揺れ舞う。  凜とした線の細い顔立ちに隠るふわりとした優しい笑顔。  妹じゃなかったら今この場で――――なにもしません。  妹でもなにもしません。 「さて、兄者」  柚は、一息入れたように目を瞑り、腰をいれて立ち上がった。 黒真珠のような瞳が光を揺らめかせながら俺を真っ直ぐに見つめる。 「なに?」 「稽古でもするか!」  俺は光の速さで首を横に振る。  なにが嬉しくて休みの日に竹刀を振らないといけないのか。 「むぅ、偶にの休みに武芸に励むのも一興かと思うぞ?」  気難しい表情でムスッとする柚。  可愛いと思った俺は、一回氷山にヘッドスライディングして頭を冷やさなくては。
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