ただそれは、小さい喜びだった

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凪ちゃんには姉がいる。 しかもこの学園の教師で、担当は音楽。 名前は矢崎 馨(やざき かおり)。 歳は見た目からしてかなり若い。 授業は終わったし、馨ちゃんは担任にはなってないから職員室にいるだろうとふんでのことで職員室に小走りに向かった。 案の定というべきか、馨ちゃんは無駄に広い職員室の一角で、何ともダルそうにデスクに体を伏せ、俺より明るい茶色の髪で遊んでいた。 善は急げという言葉にのっとって急いで馨ちゃんに近付き声をかけたところ――。 「春君だぁぁぁぁぁぁああぁぁー!!」 光の速さで抱きつかれた。 更には頬摺りをするわクルクル回るわで無駄に疲れた。 無気力から元気になったのはいいことだが、その時の俺は色々と都合もあったのでじゃれあうのは後にとった。 「えっ?私の家に?」 俺にしては珍しく、的確で素早く要件を伝え、凪ちゃんの容体を聞いた。 「今は…………会わない方がいいと思うよ」 馨ちゃんは確かにそう言った。 見たことがないぐらい暗い表情で――。 俺は何とか馨ちゃんを説き伏せて家の場所を教えてもらった。
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