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凪ちゃんは俺をしばらくは離さず、ずっと俺の胸に力無く顔をうずくめていた。
少し気の落ち着いたところで、凪ちゃんに誘われるがままに家の中にお邪魔した。
中の造りは白と黒を主体に洋風に出来ていた。
歩けば足の裏をフローリングの冷たさが伝う。
「凪ちゃん……風邪大丈夫?」
俺は、少し前に立って先導する凪ちゃんに小走りで近付いた。
本当に風邪をひいているのかはよくわからないが露骨に「なんで休んだの?」と聞くほど礼儀知らずではない。
「……風邪は、仮病です!」
凪ちゃんの顔が少し下に下がったかと思うと、いきなり立ち止まり俺の方をくるっと向いて悪戯に笑った。
その笑顔は確かに笑顔なんだが、どこかもの寂しさを感じた。
顔がやつれているからなのかも知れないので、こちらもあまり気にする素振りを見せずに軽く苦笑いした。
実際には……心配だが。
「まぁ、たまには休みたい日もあるよね」
歩くのを再開し、必死に話題を切らさないよう努める。
会話がなければ凪ちゃんはただ俯きながら歩くだけだから。
「…………ここ。ここが私の部屋です」
また立ち止まり視点を凪ちゃんから前に戻す。
そこには可愛らしいウサギの立て掛けのあるドアがあった。
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