ある休みの朝

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 パンの甘い香りで自然とその言葉が出た。  視線を落とすと、6人は座れるテーブルの上に綺麗に食器が並んでいる。  流石に、朝からコッテリしたものは食べたくないのをわかってくれているのか、野菜中心のフレッシュメニューとなっている。 「うん。フレンチトーストに野菜を色々!」  自慢気に鼻を高くしてにっこりと無邪気に笑う母さん。  これを見る限りは普通に女子校生だろう。  実年齢は秘密。 「む、珍しいな。兄者が早起きとは」  リビングから繋がる玄関への廊下から凜とした声が小さく響いた。 「おはよー柚。まぁ、偶には早起きもするよ」  廊下に立っているのは道着を着こなし、艶のある黒髪を一本に結び、竹刀を片手に持つちょっと異様な少女――――  妹の石蕗 柚(つわぶき ゆず)だ。  容姿は、胸が平均より少しないが、全体的には美少女で、流れるような黒髪は相も変わらずその容姿を更に引き立てている。 「出来れば平日に起きて欲しいものだな」  柚はもっともなことを言い放つと、竹刀を適当に壁にかけて、道着を着替えるためか、階段を上がる。 「それは気力の問題で無理っす……」
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