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誰に言うでもなく小さい声でため息のようにそう呟いた。
「先に食べてていいよー」
母さんのその言葉を聞いて、欠伸をしながら茶色の椅子に座り、パンを一口頬張った。
まさに朝に相応しい軽い味が口に広がる。
フレンチトーストだから軽い味にきまっているのだけれど。
これでギットリした味なら詐欺もいいとこだろう。
「どう?」
母さんはニコニコしながらこちらを見ている。
自分の料理を食べてもらうのは、やはり嬉しいのだろう。
「軽いパンです」
母さんが首を傾げたのは言うまでもなく、俺は一言「おいしい」と言い直した。
「あっ、柚ちゃんご飯出来てるよー」
柚が下りてきたのか、母さんは階段を向いて丁度作り終えたサラダをテーブルの上においた。
「うむ、承知した」
その声が聞こえたと同時に、俺の隣の椅子が引かれてそこに柚が座った。
柚はなんだか古風だ。
否、侍と申すべきか?
取り敢えず侍な妹だ。
「いただきます」
柚が両手を合わせ、その次にパンを口に頬張る。
洋食を食べる侍ってどうなんだろう。
「いただいてます」
いただきますを言い忘れていたので、自分流にアレンジを加えてみた。
「いただきまーす!」
母さんは朝から、すこぶるいい気分な大声を出してやはりパンから口に運んだ。
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