過去になったあの日

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「今日は寝かせて下さいませ」  床にうつ伏せになって寝る体制をとった。  けっしてビーチフラッグの気分を味わいたいわけではない。 「兄者……」  柚の呆れ声が風の音と一緒に運ばれてくる。  表情はうつ伏せのためわからない。  どうしよう。もし仁王像級に怒りの面を浮かべてたら……。  負けじと金剛力士像の顔真似したら大丈夫かな? 「――……まぁいい。明日も早起きするんだぞ、兄者。あと、寝過ぎないようにな」  意外なことにあっさりと寝るのを承諾してくれた。  なんだか逆に違和感を覚えてしまう。  ――――偶にの休みだからこそ、一緒にいてあげてもいいのかもしれない。 「柚~」  うつ伏せのまま顔をあげて家に戻ろうとする柚の後ろ姿を呼び止める。  呼び止めた時、ピクッと肩が振れたので多分少し驚いたのだろう。 「なんだ兄者? やはり稽古がしたいのか」 「いや、まったくしたくないけど」  自分の伝えたいことを言う前に無意識に断りの言葉が出た。
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