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「ねぇ」
ある大きな家のひと部屋。窓の外で降り続く雪を眺めていた少年が、ふいに口を開いた。
「なんだい?」
すぐ近くの暖炉でぬくをとっていた祖母が優しく答える。少年はその祖母に向かって複雑な表情のまま話し掛けた。
「ねぇおばあちゃん、サンタクロースってさ…」
そこで少年は少しためらう。真実を言っても良いものか逡巡しているようでもある。しかし少年はすぐに口を開いた。
「サンタクロースって、本当はパパなんじゃないの!?」
不安げな声だった。まるで知ってはいけないことを知ってしまったかのような声。しかし、それと同時に自分がそんな凄いことに気が付いたという誇らしさも含まれた声だった。少年はしっかりと祖母を見据えて返答を待つ。
祖母は表情を変えず、ゆったりとした口調で答えた。
「そうだよ。」
その言葉に、少年は少なからず絶望した。自分の考えが正しいことを証明してほしいと思う反面、どこかで否定してほしいという思いもあったのかもしれない。冷たい現実に、少年は俯いてしまった。
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