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「……わかりました」
アークはそれだけ言ってもう一度自分の体を見た。
人間と少しも変わらない。
背中からは手術台の硬さが伝わったし、自らが暖かいからこそ感じられる冷たさも感じた。
自分の体を掌で触ってみた。
男のものである筋張った手を自分の胸辺りに這わすと、肌はやはり暖かかったが、触れた胸からかすかな振動音が伝わった。
アークの心臓から、静かなモーター音の鼓動が聞こえた。
「僕は、本当にロボットなのですね」
アークは寂しそうだった。
ベルはそんな彼を慰めるように、声の調子を上げて言った。
「ロボットではないよ。極めて人間に近いアンドロイドだ。それでも、ロボットと形容されるものには違いないが。私にとってお前はロボットではない。お前は私の家族で、大切な息子だ。さあ、起きて服を着なさい。外の世界を見たいだろう?何しろお前は産まれたばかりなのだから」
ベルはアークに白のシャツとズボンを差し出した。
アークがそれを着終わると、ベルは本当の子供にするように優しくベストを着せてやった。
「僕は子供ではありません。一人で着れます。」
アークは恥ずかしそうに言った。
ベルはそれに笑顔で返し、杖をついてドアに近づき勢いよく開いた。
柔らかい太陽の光が入ってくる。
さぁ行こうか、と言ったベルの手を取り、アークは外へ出た。
丘の上から見える景色や頬に当たる風は、アークに何とも言えない感動を与えた。
「どうだ、外は広いだろう?風が気持ちよくはないかい?」
丘の下から吹き上げてくる風に髪をたなびかせて、アークは瞳を輝かした。
感嘆のあまり、声も出せなかった。
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