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「名のある使い手? 居場所を作るのに有名になった奴なんて聞いたことないぞ?」
「いや、そう言う意味じゃなくてな……」
「お前の話は抽象的な言葉ばかりだ。話をするならもう少し分かりやすくしろ。まったく」
「ううぅ……」
説明が難しいのか困り顔のイクスに、きっちりと注意してから呆れ声で締めるミスティ。強気である。だが、彼に対する嫌悪はない。
雰囲気から察するに、どうやら昨日の戦いの後に起こった事件の関係上、イクスの立ち位置は決まったらしい。危機的な状況を正す時以外、イクスはミスティに強く出れないようである。
そんな中、フィオナは何か気になったのか、歩きながらの会話に眉を潜めてイクスに訊ねる。
「……そう言えば、先ほどからあなたはこの塒の事を城とばかり言っていますが、それはどういう……」
フィオナの訊ねのその半ば辺りだった。向かう先に、また岩肌をくり貫かれたような部屋が。ランタンが灯らない真っ暗な空間が、自分達の前に立ちはだかる。
イクスは周囲を手で制してから、全員が静けさに徹したところで一度消した蒼白の光を放つランタンに手をかける。
そして、何を仕掛けたか火を使わずに光を灯した。
洞窟ゆえ、扉のない部屋の入り口。底の見えない奈落のような暗闇の蟠りを湛えるそこに向かって、ランタンを手に提げるイクスは自分達の先導をするようにして前へと進む。
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