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――オレは言ったはずだぜ、シオン。ソイツにお前達の常識は通用しないと。なら、この先にいるだろうヤツにも同じ事が言える。違うか?
(……いいや)
――ん、いい子だ。ま、大雑把に例えりゃそういう訳だから思考は柔軟に持て。
と、悪魔はそこで言葉を止め、以降は話そうとしなかった。
そんな中、後方を一瞥したフィオナがイクスへ訊ねる。
「……よくは分かりませんが、例の難敵に何かされたと考えていいのですか?」
「はい」
イクスの端的な返事に、フィオナは不敵な笑い一つ。不安など更々なしに、反対にオーガだろうが何だろうがどんと来いと言わんばかりに、意気軒昂であった。
「上等ですわ。こちらも拐われた者達を助けるまで、退くつもりはありません。何も問題はありませんわ。そうでしょう?」
フィオナがそう問い掛けると、ミスティもカナードも勇壮な笑みを返して頷いた。
不安が沸き立つような話をされたにも関わらずこうも士気が高いとは、今更ながらにこの少数での潜入が最も良い手だったのだと思えてくる。
そんな風に、シオンが士気を昂らせていると、単調だった洞窟の内部に、変化が現れる。
立ち止まったイクスが無造作にランタンを掲げると、目の前には青白い岩肌と二つの穴。
そこは今後の道を文字通り左右する、二股に別れた場所だった。
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