3059人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここ、ですね」
大きな壁にぶつかった時のように、語調険しく言うミスティ。
彼女の言葉に、フィオナも重く頷く。
一方イクスは、ランタンを掲げながら、空いた片方の手で顎をさすり、片側の穴を睨んでいた。
シオンは先を促すように、フィオナに声をかける。
「どちらに行くか、選ばなければいけませんね」
「いえ、道はあちらですわ」
しかし予想に反して、フィオナの返答は早く、その上確定的だった。
「何故、断言できるのです?」
明確な答えの出所はなにかとそう訊ねると、それにはカナードが。
こちらもミスティと同じくどこか悩ましげに、答える。
「右の穴を良く見ろ。すぐ分かる」
「あ――」
カナードに言われるがまま右の穴を見ると、答えは即座に出た。調べに足を向ける必要もない。右側の穴は、すぐに行き止まりになっていた。
「ならば、立ち止まるまでもないでしょう。行く道が左と確定しているならば、そのまま行けばいい事だと思いますが?」
と、カナードに返答しつつ、イクスに声を掛けるが、当の本人は両方の穴をしげしげと見つめるばかり。
すると代わりに、カナードが剣呑な表情に困惑を滲ませながら、意味有りげに言う。
「いや、事はそう簡単なものではないのだ」
「どういう事です?」
「それはだな――」
最初のコメントを投稿しよう!