決戦、魔法使い

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 カナードがこちらの訊ねに答えようとした時だった。  不意に辺りに鳴り渡る、ミスティの怪訝な訊ねの声。 「おい、何をしているんだ?」  声の向かった方へ振り向くと、おもむろに右の穴に入って行こうするイクスの姿。  そちらは行き止まり。岩壁しかないのに、一体なんのつもりなのか。  そう不思議に思うのも束の間、イクスは何を確信したか自信をもって呼び掛ける。 「こっちだ」  こっち。つまり、そちらに来いと言う事か。だが、意味が分からない。 「は? そこは壁だぞ。道はこっちだ」  ミスティが不可解なイクスの発言に怪訝な面持ちをさらに色濃くすると、彼はそうではないと神妙に首を横に振る。 「そっちはフェイクだ。本当の道はこっちに隠されているんだ」 「え……」 「む……」  イクスの言葉に咄嗟に声を上げたのはミスティとカナードだった。  以前に調べた時に何も見付からなかった故に、聞き逃せない言葉だったのだろう。  無論、フィオナも声は出さなかったが、表情はやはり変わっていた。  二人の怪訝そうな声を聞いたイクスは、再びミスティに向かって口を開く。 「ミスティ達は最初もそっちの道通ったんじゃないか? そしたら変な場所に出て、障気を喰らって退散してきた。そうだろ?」 「あ、ああ」  どうやら、イクスの言は当たりらしい。言い当てられた事に面食らったように目を白黒させるミスティと、あまりに精細な口振りがそうさせるか、警戒したように油断を殺して目を細める、フィオナ。 「……まるで、見ていたような物言いですわね」 「ええ、常套手段ですから。すぐにわかります」  何て事はないと断じるイクス。彼にとっては定石とも言える事なのか。
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