決戦、魔法使い

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 内心、もう驚かないと決めていたが、簡単に覆してくれるものだった。思わず、口をぽっかりと開けているミスティと、顔を見合わせてしまう。 「壁の中に……」 「入った……」  隠し通路のようなものでもあるのかとばかり思っていたが、まさかそのまま通り抜けてしまうとは、予想だにしなかった。いや、そんなことできるはずもないか。  つくづく、イクスも、そしてこの洞窟に罠を張り巡らせた主である敵も、尋常ならざる手合いであった。  自身達よりも修羅場を潜った経験が多い故か、カナードは驚きもほどほどにしてフィオナに進行を促す。 「……姫殿下」 「ええ。私が先に行きます。みなは私の後ろに続きなさい」  カナードは命令して欲しかったのだろうが、先に行けとも言わない剛毅さはさすがである。覚悟は定まっていたか、まるで王者が闊歩するように、フィオナは歩を進め、一瞬壁の前で立ち止まったが、そのままイクスに倣い、壁の中に吸い込まれるように入っていった。  どこか嬉しそうに忍び笑いを漏らしながら、カナードはそれに続く。  そして、残されたのは二人。  ミスティが頭を抱えながら弱ったような表情を作る。 「もうボクは頭の中がめちゃくちゃになりそうだ……。お前はどうだ?」 「……確かに、私もだ。だが、そうもばかり言っていられないだろう。これから私達はこんな仕掛けを作った相手に戦いを仕掛けに行くんだからな」 「あ、ああ……。そうなんだよな」  こちらに返るミスティの返事には、些か力がなかった。続けざまに起こる不可解な出来事に、彼女も気がかなり滅入ってしまったのかもしれない。  少し前には障気を浴び、瀕死の重体に陥ったのだ。無理もないか。
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