決戦、魔法使い

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 しかし、それでもここまで勇んで来たのだ。称賛こそすれ、今一度だけの頼りなさをなじる事など、出来るはずもない。  すると、ミスティは少しだけため息を漏らすように口にする。 「この先にいるヤツはホントに、とんでもないんだろうな。アイツが最初に話した時は半信半疑だったけど、今更ながら寒気がするよボクは」 「…………」  ミスティの弱気に無言のまま、飾ることなく、頷きで同意する。  確かに驚異だった。普通ならば、本拠地の構造やその状態で、相手の性格などを判断の材料にするものだが、今ばかりは先に進むにつれて敵が分からなくなってる。  どんな戦いをする剛の者なのか。どんな策を巡らす知恵者なのか。繊細な性格か、豪放な性格か、華美に凝るか。  そんな当たり前の予測すら簡単に吹き飛んでしまう。  ふと、訊ねてくるミスティ。 「なあ、お前は戦えるか?」  だが、自分にその類いの問いは愚問だった。 「無論だ。今の私に撤退の二文字はない」 「ふ、頼もしいヤツだなお前は」  弱気などバッサリ切り捨てるように断じると、ミスティはニヤリと嬉しそうに笑う。  そして、おもむろに剣を抜き放ち、前に突きだした。  それが指し示す意味は当然、“そう言う事だ”。居場所は違えども、志を共にしているといま確かめ合う、騎士の友誼。  ミスティが抜いた剣に対し、こちらも剣を抜き放って打ち合わせる。  鉄と鉄を打ち鳴らす甲高い音が、洞窟の中を反響した。 「行こう。助けを求める者たちがボクたちを待ってる」 「ああ」  そしてミスティと共に、岩壁の中に身を躍らせた。
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