3059人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ
しかし、それでもここまで勇んで来たのだ。称賛こそすれ、今一度だけの頼りなさをなじる事など、出来るはずもない。
すると、ミスティは少しだけため息を漏らすように口にする。
「この先にいるヤツはホントに、とんでもないんだろうな。アイツが最初に話した時は半信半疑だったけど、今更ながら寒気がするよボクは」
「…………」
ミスティの弱気に無言のまま、飾ることなく、頷きで同意する。
確かに驚異だった。普通ならば、本拠地の構造やその状態で、相手の性格などを判断の材料にするものだが、今ばかりは先に進むにつれて敵が分からなくなってる。
どんな戦いをする剛の者なのか。どんな策を巡らす知恵者なのか。繊細な性格か、豪放な性格か、華美に凝るか。
そんな当たり前の予測すら簡単に吹き飛んでしまう。
ふと、訊ねてくるミスティ。
「なあ、お前は戦えるか?」
だが、自分にその類いの問いは愚問だった。
「無論だ。今の私に撤退の二文字はない」
「ふ、頼もしいヤツだなお前は」
弱気などバッサリ切り捨てるように断じると、ミスティはニヤリと嬉しそうに笑う。
そして、おもむろに剣を抜き放ち、前に突きだした。
それが指し示す意味は当然、“そう言う事だ”。居場所は違えども、志を共にしているといま確かめ合う、騎士の友誼。
ミスティが抜いた剣に対し、こちらも剣を抜き放って打ち合わせる。
鉄と鉄を打ち鳴らす甲高い音が、洞窟の中を反響した。
「行こう。助けを求める者たちがボクたちを待ってる」
「ああ」
そしてミスティと共に、岩壁の中に身を躍らせた。
最初のコメントを投稿しよう!