決戦、魔法使い

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       △  騎士隊の行く手を阻んだまやかしの岩壁を抜け、そこから幾つかの罠をイクスの機微で回避し、しばらく進むと、今までの狭い岩肌の空間はどうしたのかと言うほど広い空間に出た。  そこには、視界を確保するために疎らに垂れ下がる小さなランタンや、水を貯めて置くための樽。その周りには大小様々な足跡が見受けられ、今は過ぎた入り口を境にして、この塒(ねぐら)に生活感が現れ始めた。  気が付くと洞窟の奥や上の方に、風の流れもある。洞窟内にも関わらず、湿気で不快を感じないほど通気性が存外にいい。生活面を言うならば悪くない、いや、ここはかなり良い環境であった。  周囲に気を配りながら、カナードがフィオナに話しかける。 「今まで歩いて来たところとはまるで違いますね……」 「ええ、ここからが賊達の本拠と言うことなのでしょう。洞窟にも関わらずここまで快適に出来ているのが何故かは存じませんが……どういう事か分かりますか?」  カナードの話に返答したあと、フィオナは前を歩くイクスへ訊ねた。 「さあ。ここは例の敵の城なので、オレには巧く作ってあるとしか答えようがありません」 「そうですか」  期待した答えが返らず、些か残念そうに返答するフィオナ。  そんな彼女へ、変わってイクスが訊ねる。 「姫様は興味がおありで?」 「少々気になったくらいですわ。物の配置からして賊らしくない繊細さだと」
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