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「確かに。ここの賊達は例の敵の言うことをよく聞いているのでしょう」
往路の途中で気付いた事でもあったのか、イクスが敵の内情に触れるような発言をすると、一瞬目を細めるフィオナ。
そして、以前に自分も感じた“イクスの違和感のある発言”を引き合いに出した。
「……洞窟に入る前は、動かされているかもしれないなどと言っていましたが?」
それは、自身も気になっていた事だった。口振りから察するに、もしや賊が例の敵に何らかの手段で操られているのではないかと。
しかし、今のイクスの発言は自由さを匂わせており、そういった状況を示すものではない。
であれば、彼女もそこが気になったのだろう。油断のない声音で発せられたフィオナの訊ねに、イクスは不意に地面を指で指し示す。
「地面、ですか?」
「そこにある足跡には一貫性がありません。もしここの賊達が例の敵に動かされているような状況ならば、ここにある足跡は単調なものになるでしょう。ですから、賊は自らの意思でこの空間を丁寧に扱っていると思われます」
「ふむ……」
と、フィオナが感心の混じった納得の声を出す。イクスの推察に共感できる事があったのだろう。
しかしイクスも、入寮日を間違えるような間の抜けたところがあると思いきや、存外機微に鋭く冴え渡っているものである。
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