決戦、魔法使い

15/25
3059人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ
 すると、後ろの悪魔が自分の心の内でも読んだかのように、語り掛けてくる。  ――ソイツにとって、戦いはここに入る前から始まってるのさ。状況を正確に読めなかったり、読み違えちまっただけで、遭遇した瞬間に敗北が決定的になることもある。 (だから、やけに観察眼が鋭いと?)  ――ちょいと見てみぬふりをしただけで命取りになるんだ。そりゃあ自然に洞察力も良くなるだろうぜ。  などと薄笑いを響かせて語る悪魔の話を聞いていると、またイクスが顎に手を当て思案顔を見せる。 「おそらくですが例の敵は賊の頭ではないのかもしれません」 「仲間か何かだと?」 「仲間、ですか……」  フィオナの訊ねに、イクスは頷きとは言えない歯切れの悪い返事をする。すると訊ねた彼女はその先の言葉を引き出そうとするように、更に訊ねを重ねる。 「その答えでは思うところがあると?」 「……この手合いと言うのは総じて矜持が高い連中が多いですから、賊相手に仲間意識を持つとは普通なら考えにくい話です」  イクスが言うと、フィオナはこの先にいるだろう塒の主のあり方を業腹に思うか、鼻を鳴らした。 「……賊などに荷担するクセに矜持だけは一人前ですか。程度が知れますわね」 「ま、まだ推測の域を出ませんが」  フィオナの怒りに、振り向いて少し焦ったような声を出すイクス。その焦りの出所はおそらく、フィオナが言った“程度が知れる”との厳しい言い様だろう。彼女が油断ならぬ相手を下に見るようになったかもしれないと、危惧に及んだのだ。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!