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低い唸り声の三重唱が、後ろから迫ってくる。
村の近くにいたリズベアは一体だけだった。
が、他がどこかに隠れていたらしく、いつの間にか二体分の声と足音が増えていた。
イクスはもう魔物の目の前で走っている以上、どうすることも出来なかったので、森の奥深くまで逃げ続けて今に至る。
最初は「何でこんなに居るんだよ」とか、「反則だろ」とか、「訴えるぞこんちくしょう」など元気に泣き言を吐いていたのだが、森の奥に進むに連れ、余分な言葉も出なくなった。
魔物の唸りが背中を撫でるように、刻々と近づいてくる。
「ぐっ、このままじゃ追い付かれる……」
差し迫った状況に顔色を変え、呟く。
自分の足に、特に逃げ足に、彼もそれなりの自信があった。
だが、明白。
イクスも力の限り走ったが、やはり魔物と人間の足では大きな差があった。いくら鈍重と言えど、歩幅、筋肉、どちらも遥かに開きがある。
四肢を使い猛追するリズベアは、徐々にイクスとの距離を詰めてくる。
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