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己が二脚に力をかけて、ありったけの瞬発力を注ぎ込む。
すかさずイクスは正面、要は突進して来たリズベアのいた場所まで移動し、包囲を突破。そして振り向いた。
イクスは三体のリズベアを順繰りに見る。
……やはり感想を改めるまでもなく、イクスは気持ち悪いと思った。
「一斉に攻撃しないなんて、お前らバカだろ……」
イクスは(多少)安全な間合いから、リズベアに呆れ顔で軽口を放った。
イクスの言葉の意味を知ってか知らずか、リズベアは怒りのこもった声を上げる。
「い゛ぃっ――!」
重く大きな、それでいて強烈な三つの咆哮が森のあらゆるものを震わせる。放たれる音は破壊的で、もうそれは音波という次元では比する事の出来ない、“強震”だった。
身体をビリビリと削る物質的な波。
「ぐっぅぅぅ……、っうるせー!!」
鼓膜をダイレクトに襲うリズベアの声量に、堪らずイクスは叫びを上げる。言わなければ良かった等今更ながらに思うが――もう遅い。両の耳を塞いで、リズベアが空気を吐き出し切るまで待つ。
咆哮が止まる。
肺腑から酸素を出し尽くしたリズベアを、イクスは恨めしそうに睨み付けた。
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