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どうすれば良いのか分からずおろおろする一人を除いて全員、賊へと気を充溢させる。皆、視界の悪さ程度でどうにかなるような戦士ではなかった。
――ま、お前らにとっちゃあ前菜にもならねぇ相手だわな。
そんな風に笑ってはいるが、どこかつまらなさそうな悪魔の声。助かって欲しいのか痛い目をみて欲しいのか、時々分からなくなる。
ふと、それに混じって、下の方から呆れたようなため息が聞こえたのは、気のせいか。
△
暗闇に乗じた奇襲を掛けた賊は結局、一人を残して地面に伏す事になった。その一人も、今はカナードに剣を突きつけられて、命の選択を迫られている。
あちらの策は失敗。こちらの応戦は見事と言う他ない。
確かにこれだけ手練れが居れば当然と言えば当然の結果だろう。多少視界を奪われても、負ける要素は何もなかった。
……それは、悪魔の教唆がある自分だけかも知れないが。
不意に、ミスティがこちらを向く。その表情は、怪訝でかつ、何か場違いなものでも見るように胡乱げなもの。
「……お前、本当に見習いか?」
「ああ。私などまだ騎士のなんたるかも弁えぬ、未熟者だ」
返した答えは、いつもの謙遜。いや、悪魔の力を借りている事を踏まえれば、畢竟自分の力など些細なものか。へりくだりもへりくだりでない、尤もなものであるだろう。
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