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我知らず、顔の筋肉が緩んでいくのが分かる。
変わってしまったのは、少し痩せてしまった身体や、
頭に巻かれた白い包帯、頬に張られた真っ白なガーゼ。
ああ、いつも部活で見ていたジャージや制服ではなく、今着ているのはチェックのパジャマだ。
そして、
少女はゆっくりと手近にあったサインペンに手を伸ばし、一緒に置いてあったスケッチブックを手に取った。
サラサラと、文字を書く音だけが部屋に響く。
少しの時間の間、窓から吹き込む風が頬をくすぐった。
‥‥成る程、確かにこれはクーラーの風よりもよほど気持ちいい。
目を閉じていると思わず眠くなってきて、思考が闇の中に沈み始めた頃、
ペンを置く音、そして小さく息を吐く音を聞いた。
目を開いて、少女のそばに少し近づく。
笑顔で見せてくるスケッチブックには、子供じみたどこか丸い字が見えた。
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