第一章

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「ハァハァ…」 雑木林を掻き分けながら一人の女が苦しそうに歩く。凛とした肌や黒く美しい髪などは洞窟にいた赤子に似ている。 「はやく…社様に報告しなければ…う!」 無理をして来たのだろう。体は衰弱しているようで、立つこともままならない様子だ。 うつ伏せになり手足が傷だらけになりながらも、少しづつ前に進むが、もう目的の場所に行く体力は残っていないのだろうか。 誰からも見守られることなく息絶えていった。 木々が女の死を悲しみのように風を出している。 そこへ人影が1つ近付いてきた。 「ここで死ぬことが使命じゃないはずよ。あの子が大きくなって間違いを起こしたとき、止められるのはあなただけ…」 ポゥ… 大きな着物を優雅に着こなし、膝まである長い髪を風になびかせた女は、今は亡き体に光を当て何かを唱えているようだ。 すると、体が分裂をはじめ全てが無くなる頃には、1つの発光体へと変わり空中に浮いていた。 「この世界に再び災いが降りかかるとき、貴女は【楓】という子に助けられ…そして旅をすることになる。その時まで、しばしこの森で眠りなさい…。私と再開した時元の姿へ戻しましょう」 そこまでいうと、突風が吹き落葉が舞いそれが落ち着いた頃、女と発光体のあとは無くなっていた。 運命の歯車は少しづつ動き始める―――
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