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「うろたえるなっ! 今は被害報告が先だ」
泉一茂方面総監の一喝により、動揺していた方面総監部が瞬時に静かになった。動揺しているようでは正確な情報も得られないし、的確な命令も出せないからだ。
泉方面総監は唖然とする一同を見渡し、軍帽をかぶり直す。
「現在の状況は?」
幕僚の1人をジロリと見ると低い声音で尋ねた。
「は、はい。先鋒部隊を半個包囲するようにして大量のスィエルが出現。左翼部隊に猛攻を加えています」
泉方面総監は報告を聞くなり片眉を上げた。
「出現? 出現とはどういうことだ?」
「突如としてスィエルが現れたらしいです」
「解せないな。被害は?」
「各機甲部隊は壊滅状態です」
このとき、左翼部隊に位置していた第19戦車大隊は自軍の数倍にものぼるスィエルの猛攻により、随伴歩兵ごと撃破され、僅かな生き残りが必死に反撃しているという凄惨な状態であった。
スィエルは左翼部隊から中央部隊にかけて、壮大な反撃に出ていた。
「全軍の進行を中止。作戦案第13項に従い応戦せよ。数は?」
「確認できたのは約2万ほど……」
幕僚の声は僅かながら上擦っている。
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