2882人が本棚に入れています
本棚に追加
おそらく開戦初期ではなく中期頃から加わったのだろう。
開戦初期に起きた第1次東京会戦など、対スィエル装備なしで戦闘部隊の3倍の数を相手したのだ。それに比べれば、まだ攻撃が効くぶんましだ。
「それは全体でか?」
東部方面軍を半個包囲するにはとうてい足りない数だ。泉方面総監が訝しがるのも当たり前だ。
「いいえ、左翼部隊に攻撃を加えているスィエルの数です。中央と右翼、敵後方を含めると……おそらく6万は優に超えます」
単純に考えて東部方面軍の2倍。信じられない話だが、戦闘部隊だけだと約3倍以上の敵が潜伏していたようだ。傷心の東部方面軍がどうこうできる数ではない。
泉方面総監は腕組みをして唸ることしばしの間――重い口を開けた。
「予備部隊の第23大隊を出撃準備。直轄部隊の第88中隊を撤退路確保に向かわせろ」
「ということはつまり……」
泉方面総監は幕僚たちを見回してから頷いた。
「撤退するには早過ぎるが、司令部の移動準備を始めろ。左翼部隊だけでなく中央部隊もやや後退させよ。右翼部隊は現状維持。作戦案第13項を破棄し、作戦案第15項に従い行動する」
最初のコメントを投稿しよう!