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いや、そんなことよりも――目をつぶり、ピクリとも動かないシャルロッテを冥さんは必死に揺り動かすが、反応はない。
黒丞が近寄り、シャルロッテを覗き込む。顔はいいがスカートの中を覗いたら死刑だからな。
『気絶してる……みてぇだな』
「そうだな」
おそらく先ほどの不快感をシャルロッテも受けたのだろう。それに耐えられなくて意識を失った……かもしれない。意識を失うほどでもなかったような。
『だがヤバいぞ。この嬢ちゃんが倒れちまった今、どうやって隊長んとこへ行くんでい?』
シャルロッテには申し訳ないが、確かにそうである。こんな泥沼の戦場に、しかも最前線に地形もわからず1人で行くなんて普通は自殺行為にも等しい。黒丞が焦るのも理にかなう。
「そうですよー。こっちだって大変なんですからー!」
倒れたシャルロッテを並べた椅子に寝かせながら、冥さんが懇願する。僕が何も言えずに立ち尽くしていると、ドアが勢いよく開かれた。
「失礼しますっ! 損害報告と戦況です」
ノックもせずに慌てて転がり込んできたのは、伝令役の第1係の隊員だった。額にはべっとりと汗が張り付いている。
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