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「第4小隊は約半数が戦死。第5小隊も2割の損害。第2小隊は自軍陣地まで撤退完了しましたが、後藤小隊長が重傷。第1第3小隊からは報告なし」
第4小隊はわかるが、あの後藤さんが重傷とは……第1第3小隊は無事なのだろうか。
「あと東部方面軍総監部からの最重要命令です」
「最重要命令?」
「はい。現戦線を維持しつつ全軍に退却命令が出たもようです」
退却だと!? 今退却されては天地隊長を助けられないじゃないか! クソッ……だったら始めから退却すればいいものを。
残された時間はあまりない。しかし動けない天地隊長を助けなければならない……。
「僕は行くよ」
ゆっくり振り向くと、冥さんを見た。どうやらすんなりと行かせてくれる気は毛頭ないらしい。冥さんは黒鐵と白鐵を抜き放って構えていた。
「絶対に行かせません!」
瞳には涙が浮かんでいた。
「大切な人が死ぬなんて嫌ですー! だから力ずくでも止め――っ!?」
つくづくダメだなぁと思ってしまう。ちょっとのことで赤面してしまう自分には、どうも向いていないみたいだ。
「頼む……行かせてくれ」
冥さんの耳元で懇願する。
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