第43話 開戦、戦場は東京(後編)

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 両手を回した彼女の体は細く、とても裏家業の人間とは思えないほど華奢なそれである。 「頼む。天地隊長は僕にとって……大切なんだ」  黒鐵と白鐵が音をたてて床に落ちた。そのしなやかな手は、迷うことなく背後で結ばれた。 「冥さん……」  僕は半歩下がると改めて冥さんを見た。彼女の頬はやや朱に染まり、視線は斜め下に向けられている。申し分なく可愛らしいものである。 「春日さん……」  瞳にうっすらと涙を溜め、また僕へと手を伸ばして―― 「ふざけないでくださいいいぃぃぃっ!」  そのままブレーンバスター。  ゴキンとかいう危ない音をたてて頭が床にめり込んだ。  痛いとか言ってられない。今度は僕のほうが目に涙を溜める番だった……冥さん、この仕打ちはあんまりです。 「んなもん知りません! 人が心配して言ってるのにー! あれですかー? 色仕掛けか!? 困ったら色仕掛けなんですかー!? 人としてダメですよー」  はひっ、おっしゃる通りです。仁王立ちの冥さんはフンと鼻を鳴らすと、 「春日さんには幻滅ですー! どことなりと好きなところに行ってくださいー」  うぅぅっ、あんまりだ。
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