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冥さんの的確な攻撃に打ちのめされた僕は、泣く泣く立ち上が――ちょっと待て、今なんて言った?
「何度も言わせないでくださいー。人命救助だろうが、最前線だろうが、好きなところに行けばいいんですー!」
と言ったきりそっぽを向く冥さん。
これはつまりもしかしてアレなのか? 背中しか見えないので表情は全くわからない。だけど、
「ありがとう……冥さん。行くぞ、黒丞」
『こうなったら地獄にも付き合ってやるぜっ!』
意気込む黒丞を連れて、僕は部屋を飛び出した。飛び出しながらも心の中でもう一度言う。冥さんありがとう、と。
冥さんの肩は小さく震えていた。
遠くで銃声が聞こえた。いや、もしかすると案外近いのかもしれない。しかし、それを確かめる余力など残っているはずがなかった。
「そりゃ、負傷兵を放置するわけにはいかないからな」
そう言って第4小隊隊長朝比奈三尉は肩をすくめた。
現在、第4小隊と第5小隊は負傷兵の護衛を勤めている。目の前で兵員の半数を失い、戦闘車両も撃破された第4小隊はすでに敗残兵にも等しい状態であった。朝比奈の顔色も憂かないものだ。
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