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朝比奈は先ほどの戦闘を思い出す。それは一方的なものであった。
一瞬にして園崎以下20名が血肉と成り果て、戦車2台が中級のものらしき光弾をどてっぱらに受けて横転した。
「後退っ!」
朝比奈は叫ぶも、次々と廃墟のビルから沸いてくるスィエルを目にして混乱は大きくなった。
装甲車が積載する重機関銃を乱射して援護してくれている間にも、さらに戦車小隊と他の部隊が全滅した。奇襲により壊滅的打撃を被ってしまった。
それが1時間以上も前の出来事であった。あれが今では悪夢に思えてしまう。いつの間にスィエルがあれほど集中できたのか。
「小隊長、あれは……」
生き残った第4小隊隊員が、うつむいて歩く朝比奈の肩を叩いて遠方を指さす。朝比奈な目を凝らして指の延長上を見た。
「人……か?」
こちらへと歩み寄る人影が1つ見ることができる。朝比奈は移動する兵士たちを手で制した。
「待て……生き残りかもしれない」
そう言うと、朝比奈は自ら人影へと近づいて行った。もちろん自動小銃はいつでも撃てるようにしてだ。
「そこの兵士っ! 階級と所属部隊名を言えっ!」
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