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人影は突然の制止命令に両手を上げて――
銃口を下げると朝比奈は呆けた顔をして開口した。
「か、春日一尉?」
「朝比奈じゃないか」
僕はペタンとその場に腰を下ろした。まさか朝比奈――第4小隊と巡り会えるとは。
「なんでこんなところに? しかもこんな状態で」
朝比奈が訝しがるのも仕方がないだろう。今の僕は、全身擦り傷だらけで防弾ベストも破損しているという酷い有様であった。よく生き延びれたよ。
「どうやら天地隊長が戦闘不能らしく置き去り状態なんだよ」
「なんだって?」
目を見開く朝比奈は心底驚いているようだった。こんな彼には、天地隊長が暴走したときの話は伏せておこう。
「それで救助に来たのはいいのだけど……予備弾倉ある? 弾切れで」
自動小銃の弾丸は使い切ってしまい、どうしようかと困惑していたのだ。黒丞が道を間違えたせいでな。上空を睨むも、黒丞は知らん顔である。
「あるにはあるが……いったいこれからどうするつもりだ?」
「助けに行く」
予備弾倉を渡そうとした朝比奈の手が止まる。
「正気か!? 激戦区に1人でだぞ!」
僕は何も答えず、ただ首肯する。
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