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朝比奈が驚愕するのも無理はない。しかし、だからといって帰るつもりなど毛頭ない。自分自身それ相応の覚悟はできている。たとえそれが犬死にだとしても。
朝比奈は信じられないという表情で呆然と僕を見ていたが、唐突にクスッと小さく笑った。
「そこまで……か。春日一尉、あんた相当なバカだな」
普段ならバカと言われても腹が立つだけだが、今は無性にその響きが心地よかった。
「あぁ。そうみたいだ」
初弾は装填済み、すでに進む準備は整った。あとは天地隊長の元へと突き進んで行くだけだ。
「――朝比奈三尉」
「なんだ?」
「生きて帰れたらなんか奢るよ」
もちろんご飯をだ。個人的にはキーマカレーとかキムチ雑炊だとかスパイシーなものが食べたいが。
じゃあな、ときびすを返すそうとしたら、その肩をグイと掴まれた。
「ちょっと待った。誰があんた1人で行かすか」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべて朝比奈が言う。
「第4小隊はこれより隊長救出のために進軍する! 異存はないかっ!?」
『ありませんっ!』
朝比奈の景気のいい掛け声に対し、即座に返答する第4小隊30余人。ちょっと待て、負傷兵はどうするんだ?
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