第25話 さらば補佐

2/6
前へ
/326ページ
次へ
     流れる汗を拭いながら、僕は立ち尽くしていた。なんてゆーかあれです、心拍数が跳ね馬状態で今にも飛び出しそうだ。 「なんか……前にもこんなことあった気がするなぁ」  口から大きなため息がとめどなく溢れてくる。  理由は簡単。第3師団司令部に呼び出しをくらったからだ。  もしかして、クビか? こんなご時世にクビなのか!? くそっ、これは天地(あまち)隊長のせいに違いな……って、やっぱり前にもこんなことあったような……。  まぁいいや。話を元に戻して──普通の部隊ならこんなことはありえない。ま、そりゃあ士官スタッフとか、大隊の隊長とかならありえるけど、残念ながら今の僕は違う。それなのになぜ?  簡潔に言うと、第13特殊遊撃戦隊が司令部直属だからだ。うん、正直に言って忘れていた。見事に忘却の彼方だ。 「いや、それマズくないか?」  松田三尉がすかさずツッコミをいれてくれた。ツッコんでくれるのは嬉しいんだけど……心の中のつぶやきにまでいれるのは勘弁して欲しい。  僕の左に立つ多々良(たたら)二曹が手をポンと合わせた。 「あ、自分のポジションが取られるからじゃないんですね」
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2882人が本棚に入れています
本棚に追加