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普通の読み物ならばここで世界間を移動しているだろう、しかし此処でちょっとした問題が起きた。
「なあ…いつになったら行けるんだ?」
彼を連れ私達は帰ろうとしてかれこれ数時間、しかし未だに彼の世界にいる。
ゲートが安定しないのだ、原因として考えられるのは誰かが何も知らず勝手に入ったか…この少年の持つ特異点の影響か。
どちらにせよ〝コレ〟は…この〝事態〟は最悪だ。
「結論から言うと今日中には無理ね、ちょうどいいから準備してきなさい」
ちょうどいいわけない、本音を言うと迅速に彼を連れていきたかった。
私達を知った彼が誰かに話さないとも限らない、実に最悪だ。
「ん~…んじゃちょっち帰るわ…」
着替えが無かったらアレだしな、腹も減ったし。
しかし衣服の心配をする必要がないと、俺は後に知ることになる。
「気をつけて帰りなさい」
余計な言葉は必要ない、むしろ不信感を募らせるだろう。
それに…
「こっちをなんとかしないと…」
私は不安定なゲートを安定させる為、意識を集中する。
形が歪み始めてるからか、時間がかかりそうだ。
明日あの少年がくるまでに通れるようになるのだろうか、さい先が良いと思っていただけに気分的にしんどい。
「クル!」
「クル…?…そうね、今は落ち込む暇なんて無い、目の前の事に集中するわ」
クルに話しかけられて意識が散漫していた事に気付く、ついでに落ち込んでいた事も。
「なんとしても守りましょう、私達の国を…」
「クル♪」
私は目の前のゲートに再び集中し始める、先程と違い意識が散漫する事はない。
夜が更けてゆく中、ゲートを直し続ける由良葉。
彼女の顔にうっすら汗がにじみはじめたとき、彼女の頬に冷たいものが当たる。
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